昔、ある所での話。 お婆さんがそら豆を運んでいると、一粒だけコロコロとこぼれ落ちた。それから火を焚きつけようと藁(わら)を運んでいると、一本だけ抜け落ちた。お婆さんがかまどに火をつけると、一つだけ炭がはじけて外に飛び出した。そうして出会ったそら豆と藁と炭は、幸運にも生き延びたことに感謝し、伊勢参りに出かけることにした。 旅の途中、腹を空かせたネズミに出くわした。三人の中で、そら豆だけが食べ物なので大ピンチだったが、炭が自分の体から火をおこし、ネズミに体当たりして退治した。炭のおかげで助かったそら豆だが、自分だけが食われそうになった事が不満で、腹を立てながら旅を続けた。 やがて三人は、橋のない川に出くわしたので、背の高い藁が橋になる事にした。最初に炭が渡っていたが、あまりの怖さに炭の体から火が出てきた。その火は、みるみるうちに藁に火が燃え移り、炭と藁は川へ落ちていった。 それを見たそら豆が大笑いすると、頭の皮がパチンと破れてしまった。頭が割れて泣いていると、通りかかった若い娘さんが針と黒い糸で割れた頭を縫ってくれた。その縫い跡が、今のそら豆の黒いスジとなった。