昔ある村の田んぼに、大きな大きなカエルが住んでいました。他のカエルも驚くほどの大きさで、世の中で一番大きいと自負していました。 ある時、伊勢参りに出発した大きなカエルが、真っ直ぐ続く一本道を進んでいると夜になってしまいました。そこで道の上で寝ていると、なんとそれは道ではなくて大きな蛇の背中でした。すっかり驚いたカエルはぴょんぴょんと逃げていきました。 その様子を見ていた大きな蛇は大笑いし、蛇も伊勢参りに出かける事にしました。やがて、涼しげな日陰があったので一休みしていると、その影は大きな大きな鷲(わし)の影でした。驚いた蛇は、鷲の羽ばたきで遠くへ飛ばされてしまいました。 鷲はその様子を見て笑いながら三度ほど羽ばたくと、もう海まで来ていました。鷲も伊勢参りに飛び立ったのですが、広い海の上を飛び続けているうちに、次第に疲れてきました。海から出ていた赤い棒に止まって一晩やすみ、翌日も一日中飛び続けました。 するとまた、海から赤い棒が付き出ていて、へとへとの鷲はその棒に止まって休む事にしました。その時、赤い棒が揺れたかと思うと、大きな大きな伊勢エビが姿を現しました。赤い棒は伊勢エビのヒゲだったものだから、ヒゲの一振りで鷲は遠くへ吹っ飛んで行きました。 そして今度は伊勢エビが伊勢参りに出発しました。海の中を歩いていると夕方になったので、うまい具合に空いていた穴に入ってぐっすり休む事にしました。翌朝、目を覚ました伊勢エビは、穴から噴き出した潮と一緒に天高く吹き飛ばされました。 その穴はクジラの潮吹きの穴だったのです。クジラに吹き飛ばされた伊勢エビは遥か彼方まで飛んでいき、岩の上に落っこちてひどく腰を打ち、すっかり腰が曲がってしまいましたとさ。