戦火燻る幕末の世。 徳川将軍家が「朝敵」と謗られ、 その座を追われんとする15代将軍・慶喜の下で、 無血開城を成し遂げた男がいた。 勝海舟。 貧家に生を受けながらも蛍雪の功を積み、陸軍総裁に抜擢せられた彼は、 その豊かな知見と類稀なる交渉術によって四面楚歌の世を切り抜けてゆく。 敵対していた新幕府の首魁・西郷隆盛すら、 「勝海舟という人はどれだけ知略のある人かわからない」 「ひどく惚れ申した」。 同志である大久保利通にそう語ったという。 西郷との会談に漕ぎつけた勝が思い描いていたのはしかし、 平穏な無血開城の未来だけではなかった。 「慶喜亡命作戦」「江戸焦土作戦」。 諸外国へと張り巡らされた勝の緻密な策略の数々。 そして倒幕を叫ぶ新政府側に慶喜助命を承諾させた、渾身の一手とは。 勝海舟、その知略に迫る。