いま、父の中から家族の記憶が消えようとしている… 緑に囲まれた千葉・睦沢町で暮らす高校3年生の息子、大介さん(17)は、父の介護を続ける、いわゆる「ヤングケアラー」だ。父・佳秀さん(65)は、50歳の時に、若年性アルツハイマー型認知症と診断された。それから15年、病の進行は進み、家の中を歩き回り、今では家族との会話もままならず、トイレに一人でいくこともできなくなった。いつも笑顔で、優しいスーパーマンみたいだったお父さんが… 母・京子さん(53)と大介さん、2人の妹が続けてきた介護生活は、いま“限界”を迎えようとしていた。進行していく父の認知症を前に、一家は父を介護施設に入所させるかどうかと悩み始める。 毎日、顔を合わせることで、ようやく繋がっている父の中の家族との記憶。もしも、この家を出て、介護施設に入れば、認知症が一気に進行してしまうかもしれない。コロナ禍もあって、入所すれば、半年以上、家族との面会は許されないという現実。この家を出て行けば、父の頭の中から、自分たち家族の存在は、完全に消え去ってしまうのではないか。それは、実質的に、父と家族の「お別れ」を意味する… カメラは、若年性認知症の父の介護で揺れる息子と、その一家のひと夏を見つめた。