都心から電車で1時間…東京・青梅にリヤカーでシフォンケーキを売る風変わりな夫婦がいる。久保田哲さん(49)と妻のかおりさん(44)。 哲さんが引くリヤカーは、ルートは決まっておらず、まさに神出鬼没。「幻のケーキ屋」とも呼ばれ、SNSでも話題の人気店だ。 夫婦がケーキ店を始めるまでの経緯も風変わりだった。IT企業に勤める上司と部下だった2人が結婚したのは16年前。幸せで、平穏な日々…そんな生活に異変が起きたのは、夫婦になって5年後のこと。会社の人間関係に悩んだ哲さんが、うつ病になったのだ。休職、そして退職…それまでの順風満帆な夫婦の生活は一変した。 絶望の中で出会ったのが、かおりさんの母が焼いたシフォンケーキ。そのおいしさに、哲さんは「これを売って生きていこう」と決意。リヤカーを選んだのは、歩くことが病気の回復に繋がること、人に会うことがつらくなったら逃げられる…というのが理由だった。 夫婦でケーキを焼き、売り始めて10年、おいしいと評判のケーキと穏やかな人柄で人気になった店を、試練が襲う。新型コロナウイルスによる影響で、人々は外出を控え、活気が失われていく町…このままでは、ケーキ店を続けることができなくなってしまう。この困難を乗り越えるために、夫婦が動き出す…