ギャンブルで作った300万円もの借金が原因で、婚約者に別れを告げられアパートから追い出される青年・快楽亭ブラ坊(33)。プロの落語家だが、寄席や大ホールの高座に上がることはできず、飲食店やスナックで細々と落語会を開く「落語界の“はぐれ者”」である。その師匠である快楽亭ブラックは、ブラ坊の上をいく“はぐれ者”だ。落語界のカリスマ・立川談志の高弟だったが、15年前に2000万円もの借金を抱え、一門を除名された。以来、落語団体に所属しない「フリーの落語家」として生きてきた。下ネタや放送禁止用語を交えた芸風のため、大舞台で落語会を開くことができない。時には、ストリップ劇場や狭い演芸場で落語を披露している。 ブラ坊は、そんな権威にとらわれないブラックの“はぐれ者”という生き方に憧れ、10年前に弟子入りしたのだ。 しかし、師匠・ブラックの生き方は、どんな場所でも落語で客を笑わせることのできる実力と自信に裏打ちされたもの。それに気づかないブラ坊は、“はぐれ者”と“自堕落”をはき違えてしまう。深夜のバイトのため落語会を遅刻し、借金返済のための金をギャンブルにつぎ込む。さらには落語界の不文律を犯し、ブラックから破門を突き付けられた。 ここ数年大きなブームを迎え、きらびやかに見える落語の世界。 そこから、はぐれて生きることを選んだ青年落語家の1年に密着した。