小津安二郎らの映画の舞台となり、多くの観光客が訪れる瀬戸内航路の要衝・尾道は、坂と路地の町。目の前に海が迫り平地が少ないため急斜面に町が発展し、細い路地が縫うように広がっている。坂の上には飛鳥時代から寺院が建てられ、中ほどには明治時代からの木造建築が立ち並ぶ。車が進入できない幅の路地は、今も生活の場。坂道を人々が行き交い、家々からの声が聞こえ、匂いが漂う。 坂ばかりで車が入れない町は、高齢者にとっては住みづらい所でもある。それをカバーするために今も隣近所の繋がりが強く、そういう生活に憧れて移住してくる若者も多い。漁師の住む路地のお好み焼き店には、ご飯を持参すると焼き飯にしてくれるという独特の習慣が残る。漁のため両親が不在がちになる子供たちに温かいものを食べさせたいという、助け合いの心から生まれた習慣だという。 歴史の町、港の町、そして昭和の香りの暮らしが残る町・尾道を、坂と路地から見つめる。