異端派たちを強引に犯人に仕立て上げる異端審問官ギー。これは当時のイタリアの政治状況を隠喩的に表現したものだ。エーコによる「知と権力の結託」への告発を読み解く 異端派たちを強引に犯人に仕立て上げる異端審問官ギー。その勢いをかって皇帝側を会議で断罪。教皇側と皇帝側の調停は決裂する。実はこの描写は、当時イタリアの政治状況を隠喩的に表現したものだ。要人誘拐事件を政府側の一方的解釈で捻(ね)じ曲げ結局要人が殺害されてしまう「モーロ事件」。この小説はエーコによる不正の告発と読める。第3回は、権力と言語の関係や異端を排除する記号システムの恐ろしさを明らかにしていく。