平和維持のシステムとして「平和のための連合」を構想したカント。戦争のない理想状態とされてきた「世界国家」を断念する消極的な提案だが、その裏には鋭い洞察があった。 平和維持のシステムとして「平和のための連合」を構想したカント。それは、戦争のない理想状態とされてきた「世界国家」を断念する消極的ともいえる提案だ。なぜ「世界国家」という積極的な提案ではだめなのか?そこには人間や国家についての鋭い洞察があった。世界国家への統合は、異なる文化、価値観、言語という個別の事情を超えて、特定の強者の文化や価値観が一方的に物事を決定するという大きな抑圧を生みかねないという。