「春はあけぼの」に代表される五感をフル活用した描写力。その秘密は「時間で切り取る」等常識を打ち破った清少納言の技にあった。第1回は枕草子の鮮烈な情景描写に迫る。 視覚、聴覚、嗅覚をフルに使って世の中を切り取った清少納言。最も有名なのが「春はあけぼの」で始まる文章である。春の早朝、横雲がたなびく中、空が次第に白くなっていく様子を描いたものだが、こうした散文による風景描写を日本文学に持ち込んだのは清少納言が初めて。「源氏物語」にもその影響が見られる。第1回では、清少納言が切り取った一瞬の情景を楽しむと共に、「枕草子」が生まれた背景に迫る。