「変身」の主人公・グレーゴルは、なぜ虫に変身してしまったのだろうか。第1回では、社会や家族など、様々なしがらみから逃れたいと願う人間の心情について考える。 「変身」は人間の真実をついた作品であると共に、著者カフカ自身が投影されている作品でもある。カフカはサラリーマンとして働いていたが、本当は小説を書くことに集中したいと思っていた。そのため外に出かけて働くのは大変な苦痛だった。「変身」の主人公・グレーゴルが虫になり、部屋に閉じこもるのも、カフカの出社拒否願望の現れと解釈できる。第1回では、社会や家族のしがらみから逃れたいと願う人間の心情について考える。