2010年7月7日午前6時52分。スイス中部の飛行場から、太陽エネルギーだけで飛ぶ有人飛行機が、大空へと舞い上がりました。太陽光パネルで発電しながら飛ぶ飛行機が、史上初めての昼夜連続の有人飛行に挑んだのです。 化石燃料にたよらず、新しいエネルギーで人類の未来を切り開こうと思い立ったのは、スイスの冒険家ベルトラン・ピカールです。ベルトランは、冒険家の家系に生まれ育ちました。物理学者でもあった祖父は気球による高度記録を達成し、父は有人潜水艇(せんすいてい)で深度6000メートルの記録を樹立しています。ベルトラン自身も幼いころから空にあこがれ、これまでに気球による無着陸世界一周の記録を達成しました。しかしこの時ベルトランは、たくさんの燃料を使う冒険は新しい時代にはふさわしくない、次に大空に挑む時は、環境に配慮したエネルギーで記録を達成しようと決心したのです。 太陽エネルギーだけで飛行機を飛ばすベルトランの呼びかけに大勢の技術者が参加し、一丸となってその開発に携わってきました。長年におよぶ研究に、様々な困難と向き合いながら取り組んでこられたのは、太陽エネルギーの飛行機を開発することで持続可能な社会の実現が可能であることを証明したいという、チーム全員の強い思いでした。 太陽が沈む夜をこえ、昼夜連続飛行は成功するのでしょうか?それは、人類の未来にどんな光をもたらすのでしょうか? 原題:Solar Impulse: The Wings of the Sun 制作:Gedeon Programmes (フランス 2010年)