兵庫県尼崎市を中心に、香川、岡山など各地で次々と明らかになった「殺人死体遺棄事件」。犯罪史上稀にみるこの事件は、首謀者とされる角田美代子元被告によって、15年という長い年月の間に、複数の家族がバラバラにされた挙げ句、暴力や虐待が繰り返され、分かっているだけでも7人が死亡、3人が行方不明となっている。さらに、この10人以外にも関係者の中には不審死や自殺などが相次いでいるが、時間が経ち過ぎて検証できず、事件化が難しくなっているケースも少なくない。しかも、「全てを知っていた」はずの角田元被告は逮捕後の昨年12月に自殺。事件の全容解明に大きな壁が立ちはだかっている・・・。 これほど多くの家族が巻き込まれながら、なぜ15年以上もの間、見逃されてきたのか。 取材チームは、事件初期に起きたあるケースを通じて、角田元被告が、ささいなきっかけを理由に家族を取り込み、社会と断絶させた上で、財産を巻き上げ、家族同士で暴力をふるわせるその過程の一部始終をつかんだ。その一方で、社会の側にも“落とし穴”があったことが明らかになってきている。事件に巻き込まれた被害者やその周辺には、何度も逃亡を繰り返したり、SOSのサインを繰り返し発したりした者も少なくなかった。しかしそのサインは社会や警察に見過ごされ、結果、多くの命が奪われてしまったのだ。二度と同じような事件を繰り返さないために、何が必要なのか。番組では、稀代の事件が突きつける課題を、ドキュメンタリーや被害者証言による再現ドラマなど多角的なアプローチで徹底検証する。