日本を代表する火祭り「青森ねぶた祭」。巨大なねぶたが町を練り歩き、北国の一瞬の夏が燃え上がる。その勇壮華麗な様は、海外で“世界最高の紙の工芸品”と賞賛される。今、このねぶたが急速に進化している。LED照明の導入。より複雑で立体的な構図。制作する「ねぶた師」たちは300年の伝統に安住せず、新たな作品を生み出そうと、賞の獲得を目指して鎬を削る。 この進化の中心にいるのが、北村麻子(35)だ。唯一の女性ねぶた師で、子育てとねぶた作りを両立させる働くママでもある。持ち味は華麗な色使いと斬新な発想。去年、初めて最高賞を獲得し、今年は葛飾北斎をテーマに連覇に挑む。その前に立ちはだかるのが、父であり師匠である北村隆(70)。最高賞の獲得は歴代最多となる12回を誇り、「名人」の称号を持つ。しかし、去年は麻子に敗れ2位に。雪辱を誓う今年のテーマは、5人の盗賊が見えを切る場面で名高い「白浪五人男」。通常2体で作られるねぶたにあって、5体は史上初の試みだ。 新進気鋭の娘と名人の父。親子であるがゆえの葛藤と絆。ねぶたにかける二人の運命の戦いを、4Kカメラの精細な映像で描き出す。