相川清次郎は、東京大森を縄張りとする関東桜田組一家の若衆頭であった。彼は、賭場開帳による警察の追及を一時避けるための旅先、越後直江津で静枝と知りあった。静枝は、旅の女剣劇一座の座長中村権之助の養女であり、一座の花形であった。二人はお互の恋を激しく燃焼させ求め合った。だが、間もなく清次郎は東京へ帰らなければならなくなり、二人は一年後の再会を固く約束し、そして別れた。大森では、天野良平がひきいる、愚連隊新地会がのさばりはじめ、清次郎は新地会とのいさかいで数人を傷つけ、五年の刑に服すことになった。それから数年後、権之助一座は大森に在った。権之助は病で倒れ、一座は解散寸前に追いこまれていたが、そうした一座に救いの手をのべたのが岩井一家の組長東五郎だった。東五郎は、静枝を妻にと望み、清次郎を探す望みを捨てていた静枝はこれを受けた。東五郎は、刑務所に清次郎を訪ね結婚を告げた。昭和八年、岩井一家は大森海岸の埋立工事を一手に請け負ったが、この利権に目をつけた、岩井一家の本家・桜田一家総長大竹は新地会をあやつり、岩井一家と対立させる一方、殺し屋・金原に東五郎の暗殺を命じていた。清次郎が出所する前日、東五郎は射殺された。親分を失った岩井一家に、大竹の露骨な魔手が迫った。一家は静枝をたて、清次郎と、彼の弟分で代貸の勘次が力を合わせていかなければならなかった。しかし、大竹の策略により、清次郎は一家を追われ、勘次が総領に坐ったが、やがて東五郎殺しが、大竹の手によるものだと知った勘次は殺された。この報に接した清次郎は日本刀を羽織でくるみ、大竹が仕切る岩井一家へと向った。
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Kôsaku Yamashita |
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