青森県弘前市。津軽塗職人の青木清史郎(小林薫)と父の仕事を手伝う娘・美也子(堀田真由)が、年季の入った工房で作業をしている。工房からは漆が何度も塗られ、研がれ、その音だけが響いている。美也子は、高校卒業後、特にやりたいことが見つからず、家計を助けるために近所のスーパーで漫然と働きながら家業を手伝っていた。 幼い頃から人とコミュニケーションを取るのが苦手で、恋人や仲のいい友人もおらず、家とスーパーを往復する毎日。唯一心を開ける存在は隣に住む吉田のばっちゃ(木野花)だ。父・清史郎は、文部科学大臣賞を獲ったこともある津軽塗の名匠だった祖父から津軽塗を継いだが、今は注文も減ってしまい、さんざん苦労しているようだ。そんな青木家は、工房の隣に建つ自宅で父娘の二人暮らし。家族より仕事を優先し続けた清史郎に愛想を尽かして、数年前に家を出ていった母(片岡礼子)。父と祖父の「津軽塗を継いでほしい」という期待を裏切り家業を継がないと決め、美容師となった兄・ユウ(坂東龍汰)。気づけば家族はバラバラになっていた。
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